英国 The Economist 誌を読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economist を読んだ感想を書きます

なぜスタートアップ企業はシリコンバレーから離れているのか?

The Economist 誌9月1日号にシリコンバレーに関する興味深い記事が載っています。

www.economist.com

 

曰く、シリコンバレーで変化が起こっていることが数字にも出ている、と。昨年実施されたある調査では、向こう数年で転出を考えている人が2016年の34%から46%に増加。また、サンフランシスコ郡から転出者数が転入者数を上回ったとのことで、”Off Silicon Valleying” を合言葉にスタートアップ企業がシリコンバレーを離れているそうです。あの有名なピーターテールもそのひとりだとか。

 

その主な理由はシリコンバレーの家賃などの生活コストの増加です。新規技術への投資に現金を回したいスタートアップ企業にとって、平均都市の4倍の生活コストを要するシリコンバレーから離れるのも納得がいきます。皮肉なことに、シリコンバレー発祥の企業が生み出した数々の新技術によって、今やスタートアップ企業はシリコンバレー以外の場所(メディアならニューヨーク、フィンテックならロンドン、自動運転車ならフェニックスとピッツバーグ、ハードウェアならばシンセン)でも働けるようになっているので、シリコンバレーから離れることを厭いません。

 

実態はともかく、4倍の生活費が掛かる場所に住むことで得られる経験は、そこに人が集中しているから得られるもので、映画『ソーシャル・ネットワーク』に描かれている通りだと思いました(主人公は学業を優先してシリコンバレーに行けなかった – それが原因で Facebook の波に乗り切れなかったのですが)。おそらく、ニューヨーク・ロンドン・フェニックス・ピッツバーグ・シンセンを飛び回る人もいるでしょうが、物理的な移動手段に革新的な技術が登場しない限り、時差ぼけに苦しみながら人脈を構築していくのでしょうか。(あるいは、仮想現実上のバーの発展が先でしょうか。)