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オーストラリアの森林火災から学ぶべきこと

The Economist 誌の1月9日号にオーストラリアの森林火災に関する記事が載っていました。

www.economist.com

現時点で26人が死亡、2,300戸以上の住宅が燃え、約5億匹以上の動物が犠牲になった史上最大級のオーストラリアの森林火災は昨年9月から燃え始め今ではおよそ1,100万ヘクタール、ブルガリアの国土面積に匹敵する土地が延焼しているとのこと。

 

今回のオーストラリアの森林火災から学ぶべきこととして同誌は三つ挙げています。一つ目は、気候変動の影響により森林火災が発生しやすくなっていること。実際に、オーストラリアでは2019年は1910年以降最も平均気温が高かった年(長期平均から1.5℃も高い年)である一方で降水量は平年より40%も低い年(1990年以降最も低い水準)であったそうです。

 

二つ目は火災が悪化した場合に通常の対策では追い付かないということ。実際に、オーストラリアは各国に先立って森林火災対策を行っていたのにも関わらず、消防士の命が犠牲になる結果となりました。火災が発生した場所はもはや人間が住める地域ではなくなっているのかもしれません。火災保険のプレミアム高くなれば、人々は不動産を所有しようとは思わないでしょう。

 

最後に、気候変動の影響が目に見えて現れるようになると、人々の行動も変化するという点です。特に、オーストラリアでは昨年の総選挙で気候変動問題に懐疑的な有権者によって大規模石炭プロジェクトが支持され、クイーンズランド州をオーストラリアから切り離そうとする "Quexit" というインターネットミームが生まれるほどに議論されました。しかし、大規模火災が貴重な自然や個々人の財産、そして尊い命を奪うようになると、環境デモの数も増えていくでしょう。同じことがオーストラリア以外でも広がると同誌は見ています。

 

それでもミクロな人々は気候変動問題に真剣には取り組まないでしょう。国や共同体によるマクロな枠組み設定(炭素税など)がなければ、ビジネスはお金を儲ける最短の道だけを追求するだけです。個々人の取り組みでは変化させようがないレベルの話であり、対岸の火事から各国政府が真剣に学び対策を取ることが重要であると思っています。