英国 The Economist 誌を読むブログ

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カリフォルニア州議会で審議中のAI規制強化法案

8 月 24 日号の The Economist 誌から AI 規制に関する記事です。

www.economist.com

AI規制法案に関する中で米国のカリフォルニア州議会で審議中の法案(SB 1047)にも焦点を当てています。SB 1047 は、AI(人工知能)の規制を強化する法案であり、特に大規模な AI モデルに対して安全性テストや「キルスイッチ」の導入を義務付ける内容を含むとのこと。

 

同誌は現在の AI 規制に対して慎重なアプローチを支持しており、①AIの理論的リスクと現実的リスクの区別、②規制のタイミングと影響、③政府の対応の妥当性の点から SB 1047 を批判し、ニューサム州知事には拒否権発動するよう推奨するポジションです。

 

また同誌はAIの「存在的リスク」や「大規模な被害」の可能性に基づいた規制が議論されているが、現時点ではそのようなリスクを過度に重視することは適切ではないと指摘。規制のタイミングについても、特定の安全規制の将来的な強化の必要性には触れつつも、現時点での導入はイノベーションの阻害に繋がり、技術の進展や学術研究・企業活動を麻痺させる可能性といった負の側面が大きいと切り捨てています。

 

SB 1047 のような法案が、SF 的な世界観の中でのみ発生する問題に恐怖的に対応しようとしている状況を批判し、AI が物理的な破壊を起こす蓋然性の低さから、規制するべきは非物理的被害(例:プライバシー侵害や差別)に焦点を置くべき、と同誌は主張しています。

 

EUイノベーションが生まれないことを逆手に取って規制によってゲームチェンジを図ろうとしていますが、同誌は、Meta や Spotify の CEO の証言とともに、案の文言が曖昧であり、AI開発者が法律をどのように遵守すべきかを理解するのが難しい事業環境化した結果、消費者(国民)が不利益を被っているとも指摘しています。

 

政治家には難しい舵取りとは思うものの、SF 的世界観で曖昧に恐怖を煽るより、現実的な問題への対応を急ぐことのほうが理に適っているように聞こえるため、この件は同誌の主張が正しいように思います。

 

尤も、カリフォルニアのような恵まれた気候の地域では、このような非現実的な課題解決くらしか行うことがないのかもしれませんね。