英国 The Economist 誌を読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economist を読んだ感想を書きます

地球温暖化の問題に取り組むべきなのは?

7月6日付の The Economist 誌に Shell の取り組みに関する記事が載っています。

 

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同誌は石炭から天然ガスへの移行の際には汚さと汚れた服を冷たい水で洗濯しないといけないことがドライバーになったという Shell CEO のエピソードを紹介しながら、化石燃料からクリーンエネルギーへの移行の際には地球温暖化がドライバーになるはずだ、という論調で Shell の取り組みと実際の問題点について触れています。

 

Shell は他のオイルメジャーとは一線を画しており、特に向こう 30 年のクリーンエネルギーへの需要の高まりを察知して石油ではなくガスに投資し、役員報酬は排出量削減と連動するようにしています。とはいえ、株主の要求に応えるべく配当原資のレガシービジネスである石油/ケミカルを捨てることはありません。その言い訳として、社会全体で取り組むべき問題(生産者の Shell だけでなく、ガソリン車を生産する車メーカーや車を運転する消費者もそのコストを応分負担すべき)という認識が不足していること、さらには Shell のような民間以外の生産者の影響が大きすぎる点(国営石油会社から取り組むべき)に加えて、エネルギー需要は発展途上国の近代的な生活への需要に繋がっており、先進国が無視すべきではない、といった点を挙げており、かなりの説得力を持っているように思います。

 

このブログでも何度か取り上げていますが、これはステップバイステップで対処するべき問題です。なぜならば経済的な革新がない限りいきなり100%再生エネルギーという世界は来ないでしょう。それであれば、それまでの間は天然ガスで妥協しつつ、1日でも早く革新を待つ、という姿勢でいいのではないかと思います。

Facebook と Libra

The Economist 誌の6月22日号に Facebook が発表した新しい暗号通貨についての記事が興味深いものでした。

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曰く、同社は Libra と呼ばれるブロックチェーン技術を使用した自社通貨を発行し、プラットフォームである Facebook 経由で使用できるようにすると発表。24億人の Facebook ユーザーは Libra をショッピングや送金(同社は海外送金手数料を無料にすることを強調)に採用でき、すでに VISA や Uber など 28 社が Libra 決済の輪に加わることを表明している。

 

Libra の特長は主要通貨のバスケットにリンクさせる点でもある。Facebook から独立した組織が、債券市場などの安全資産で運用する形になるため、いわゆるナローバンクの形態を取ることになる。仮に欧米の銀行の預金者がそれぞれ10%を銀行から Facebook に預金移動すると、Libra の規模は2兆ドとなり世界有数の金融機関になり得ます。

 

海外送金については、昔から銀行業界の利益の源泉です。近年は Transferwise のような企業が画期的なレートを提供しているものの、それでもフラストレーションが溜まるレートの適用です。それを無料にする、24時間365日対応にするとしている Libra はユーザーにとって魅力的だと思います。個人的にも、資産分散の観点から買いたいと感じます。

 

問題は Facebook のカバナンス体制で、個人情報の保護をきちんとできていない現状から考えると、更に厳しい情報管理が求められるであろう金融業に参入決定した同社にとって長い道のりになることが予想されるが、画期的なサービスあるいは世界を変えれるプラットフォーム業者としてぜひ乗り越えてほしい。

ワクチンを信用する

6月22日号の The Economist の Politics this week に衝撃的なグラフが載っていました。

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曰く、 Wellcome Trust の調査によれば、ワクチンをある程度信用している人は約80%程度にとどまるということ。さらに、先進国の人は発展途上国の人よりもワクチンを信用していないという衝撃的な結果になっています。

特に西欧諸国においては、ワクチンを強く信用している人の割合がわずか 36% と、ワクチンを安全ではないと考える人たちが多くなっています。

 

個人的には驚きの結果です。なぜなら、ワクチンは過去に多くの人が死んでいった結果生まれた特効薬のようなもので、多くの犠牲の上に成り立っている人類の英知のようなものだと思っていたからです。

トランプ大統領の英国訪問

The Economist 誌の6月8日号にトランプ大統領の英国訪問に関する記事が載っています。

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曰く、トランプ大統領は英国訪問中に女王やメイ首相が差し込んだ繊細な皮肉に気が付かなかったかもしれない、とのこと。読んでみると具体的には国際機関の存在価値を褒めたことを指しているようで、根本的に対立する意見を持つ相手に使う皮肉のレベルとしては、むしろ低いのではないか。実際、Huaweiの件ではイニシアティブを取ったオーストラリアと相応のプレッシャーをかけているアメリカと比べて、イギリスのほうが楽観的に見えるという人もいる。

 

Brexitに対しても賛成の立場を取るトランプ大統領は、ボリス・ジョンソン氏を筆頭にメイ首相の後任候補であるコーヴ環境相およびハント外相と面談機会を模索していたようで、同誌も「前任のオバマ大統領と比べてどれほど効果があるのか知らないが」としながらも両氏はうれしそうだった、と締めくくっている。

 

ハイレベルに英国(同誌)と米国(トランプ大統領)の立場の違いが分かる良い記事。気候変動やイラン関連では英国側に寄り添いたくなるも、NATOや二国間ディールの件ではどうも The Economist の論が弱いように感じる。とはいえ、EU離脱後に米国と結ぶであろう二国間ディールこそ、Brexit派にとって求めているものだから同誌としては否定せざるを得ないのだろう。

The Economist のマスターズ予想を振り返る

The Economist 誌の 4 月 6 日号から先日行われたゴルフの四大メジャー選手権の一つであるマスターズ・トーナメントの予想を紹介します。

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タイガーウッズは32歳時点で過去メジャー選手権を14回も制しており、過去最高のジャックニクラスの18回を塗り替えるのは時間の問題だと思われていました。しかし、その後の不倫スキャンダルおよび心身の故障によって第一線から姿を消し、その間に別選手の台頭もあり、終わった選手だとみなされていました。

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出典: The Economist

しかし、昨年2013年以降初となるツアー勝利を挙げ、過去2回のメジャー選手権では上位に位置するなど、復活しつつあると騒がれています。しかし、The Economist 誌は独自のモデルによる予想で、タイガーウッズは世界10位内に復活しつつあるが、マスターズ・トーナメントを制するまでには復活していない、と結論付けています。勝利確率は2%(同誌曰く、世界最高の選手はダスティンジョンソン - それでも勝利確率は9%)。なお、同誌が引用する各オッズによれば、タイガーウッズの勝利確率は5%となっています。

 

結果は…

www.nikkansports.com

 

the-ans.jp

 

もちろん、予想的中は容易なことではありません。そして単なる予想屋さんには意義もあまりないと感じます。要諦は、いかにポジションを取るかであると思いますので、The Economist 誌が採用したアプローチそのものの価値は薄まることはないでしょう。

「世界には四種類の国家がある。先進国、発展途上国、アルゼンチン、そして日本だ」とノーベル賞受賞経済学者は言った

The Economist 誌の 3 月 30 日号に日本とアルゼンチンのマクロ経済についての記事が載っています。

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曰く、インフレに苦しみながらも対処できないアルゼンチンとインフレから抜け出せずに苦慮している日本を対比し、どちらもユニークなマクロ経済であるとのこと。

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記事は端的に両政府のマクロ政策の失敗を揶揄するもので、Simon Kuznets という経済学者(ノーベル経済学賞受賞)のコメントのパロディで締めくくっています。

 

日銀の掲げるインフレ 2% を現実的なものに変えるとしても、市場からは政策変更だと受け取られるというのはその通りだと感じます。アルゼンチンのことについては詳しくは知りませんでしたが、日本に負けずとも劣らないユニークな歴史を持っていることが分かる記事でした。

大麻使用のリスクを理解するための動物実験は割高だったが、今は北米からサンプルが無料で届く

The Economist 誌の 3 月 23 日号に大麻と精神病のつながりに関する興味深い記事が載っていました。

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曰く、ヨーロッパにおけるある研究によれば THC(テトラヒドロカンナビノール: 大麻/マリファナの主な有効成分の一つ)含有率 25% 以上の強い大麻/マリファナの常用者は精神病になるリスクが 5 倍増となるとのこと。(含有量の少ないものでも常用している場合はリスクが 3 倍増)

 

昨今、北米における娯楽用大麻使用解禁後の新しいブームが到来し、一躍脚光を浴びている大麻業界にとっては、あまり都合の良い結果ではないようにも見えます。とはいえ、アルコールの酒類業界、ニコチンのたばこ業界、カフェインの珈琲業界など、その依存性/危険性については様々な形で様々に示されていますが、あまりあるメリットが先行して依然として健在です。大麻業界も同様ではないかとみています。

 

タイトルには「大麻使用のリスクを理解するための動物実験は割高だが、今は北米からサンプルが無料で届く」という、ある科学者のコメントを載せました。いい得て妙だと思います。大麻/マリファナについては、たばこと同様に自分がやりたいとは(現時点では)思っていません。しかし、大麻業界については、ゆっくり眺めながら生きていきたいと思います。