英国 The Economist 誌を読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economist を読んだ感想を書きます

The Economist のマスターズ予想を振り返る

The Economist 誌の 4 月 6 日号から先日行われたゴルフの四大メジャー選手権の一つであるマスターズ・トーナメントの予想を紹介します。

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タイガーウッズは32歳時点で過去メジャー選手権を14回も制しており、過去最高のジャックニクラスの18回を塗り替えるのは時間の問題だと思われていました。しかし、その後の不倫スキャンダルおよび心身の故障によって第一線から姿を消し、その間に別選手の台頭もあり、終わった選手だとみなされていました。

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出典: The Economist

しかし、昨年2013年以降初となるツアー勝利を挙げ、過去2回のメジャー選手権では上位に位置するなど、復活しつつあると騒がれています。しかし、The Economist 誌は独自のモデルによる予想で、タイガーウッズは世界10位内に復活しつつあるが、マスターズ・トーナメントを制するまでには復活していない、と結論付けています。勝利確率は2%(同誌曰く、世界最高の選手はダスティンジョンソン - それでも勝利確率は9%)。なお、同誌が引用する各オッズによれば、タイガーウッズの勝利確率は5%となっています。

 

結果は…

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the-ans.jp

 

もちろん、予想的中は容易なことではありません。そして単なる予想屋さんには意義もあまりないと感じます。要諦は、いかにポジションを取るかであると思いますので、The Economist 誌が採用したアプローチそのものの価値は薄まることはないでしょう。

「世界には四種類の国家がある。先進国、発展途上国、アルゼンチン、そして日本だ」とノーベル賞受賞経済学者は言った

The Economist 誌の 3 月 30 日号に日本とアルゼンチンのマクロ経済についての記事が載っています。

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曰く、インフレに苦しみながらも対処できないアルゼンチンとインフレから抜け出せずに苦慮している日本を対比し、どちらもユニークなマクロ経済であるとのこと。

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記事は端的に両政府のマクロ政策の失敗を揶揄するもので、Simon Kuznets という経済学者(ノーベル経済学賞受賞)のコメントのパロディで締めくくっています。

 

日銀の掲げるインフレ 2% を現実的なものに変えるとしても、市場からは政策変更だと受け取られるというのはその通りだと感じます。アルゼンチンのことについては詳しくは知りませんでしたが、日本に負けずとも劣らないユニークな歴史を持っていることが分かる記事でした。

大麻使用のリスクを理解するための動物実験は割高だったが、今は北米からサンプルが無料で届く

The Economist 誌の 3 月 23 日号に大麻と精神病のつながりに関する興味深い記事が載っていました。

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曰く、ヨーロッパにおけるある研究によれば THC(テトラヒドロカンナビノール: 大麻/マリファナの主な有効成分の一つ)含有率 25% 以上の強い大麻/マリファナの常用者は精神病になるリスクが 5 倍増となるとのこと。(含有量の少ないものでも常用している場合はリスクが 3 倍増)

 

昨今、北米における娯楽用大麻使用解禁後の新しいブームが到来し、一躍脚光を浴びている大麻業界にとっては、あまり都合の良い結果ではないようにも見えます。とはいえ、アルコールの酒類業界、ニコチンのたばこ業界、カフェインの珈琲業界など、その依存性/危険性については様々な形で様々に示されていますが、あまりあるメリットが先行して依然として健在です。大麻業界も同様ではないかとみています。

 

タイトルには「大麻使用のリスクを理解するための動物実験は割高だが、今は北米からサンプルが無料で届く」という、ある科学者のコメントを載せました。いい得て妙だと思います。大麻/マリファナについては、たばこと同様に自分がやりたいとは(現時点では)思っていません。しかし、大麻業界については、ゆっくり眺めながら生きていきたいと思います。

ソフトバンクの 1 兆円ファンドとそのリスク

The Economist 誌の3月23日号にソフトバンクVision Fund (サウジアラビアMbS が 450 億ドルもの出資を約束した 1 兆円ファンド)に関する記事が載っています。

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曰く、Jamal Khashoggi 氏の不審死に関するスキャンダルと Vision Fund 1 (同誌がそう呼ぶ) のガバナンス問題が孫社長が持つ Vision Fund 2 構想への逆風になり得るとのこと。後者よりも前者の方が潜在的ダメージが大きいのではないかと。

 

前者に関して、スタートアップ側が疑惑のサウジアラビアマネーを拒否する可能性は良いポイントを突いていて、現時点において MbS の関与は否定されていますが、今後新事実の発見や真相解明によって関与が明らかになった場合、「ヤバい」人からの出資は絶対に避けるべきという起業者側の基本線上にある弁慶の泣き所になりかねませんし、「汚いお金は要りません」と言われてしまうファンドに価値はありません。

 

後者については本文が詳しいですが、ソフトバンク本体の企業価値が Alibaba や Vision Fund や ARM などの出資企業の企業価値の総和から抱える純負債を引いた価値よりも 31% も割安であることは事実です。その対策も兼ねて日本の携帯電話事業を切り離して最大規模かつ詐欺的な IPO を実施したわけですから、好意的に捉える向きもあるでしょう。加えて、サウジアラビア側が一定規模以上の投資に拒否権を有するなど、ガバナンスも(表向きには)徐々に構築されているように感じます。

(Uber, Grab, Ola 等のライバルである) LyftIPO が行われたことによって Vision Fund が保有する銘柄も続々と IPO する一年になることが予想されるため、まさに正念場であり、引き続き世界中から注目を集めるソフトバンクには注目していきます。

シリコンバレーがオイルメジャーに?

The Economist 誌の3月16日号に思わぬ企業提携に関する記事が載っていました。

 

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曰く、Microsoft/Google/Amazonの各社がAI/IoT関連でオイルメジャーとの提携を進めているとのこと。具体的には、Microsoftエクソンモービルと、Amazon が Shell と、Google は Total 等と、各種分野で提携を進めようとしているようです。

 

示唆的なのは、再生可能エネルギーに執心である環境派の若者が主戦力として活躍するIT企業が果たしてオイルメジャーとの提携に積極的であるのか、という懸念と、オイルメジャー側の外注によるハッキングリスクについても触れられている点です。

 

個人的には AI 活用の波がオイルメジャーにも来ていることに対して違和感はないものの、大企業が直接 GAFA と組むようなイメージはなかったので Microsoft と Exxon の提携は非常に印象的でした。エネルギー分野でも中国企業の攻勢は凄まじいので、中国IT企業と中国オイルメジャーの提携による動きも別途注意していきたいと思います。

オーストラリアの移民問題

2月16日の The Economist 誌にオーストラリアの不法移民に関する記事が載っていました。

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曰く、病気の移民受け入れを許可する法案がオーストラリア下院を通過したそうです。オーストラリア政府は不法移民が入国を試みた際には、その移民が出発した港の国(たいていはインドネシア)に送り返すか、もしくは、パプアニューギニアの領土である Manus Island か太平洋の超小国 Nauru 共和国へに輸送していました。

 

これは違法移民対策でもあり、病気の感染を防ぐ意味合いもあるのですが、医療のレベルが限定的な Manus 島や Nauru 共和国にいる難民の間では心身の病気が蔓延しているのが現状です。実際に12人が死亡しているとのこと。

 

とはいえ通過した法案は国家安全保障の観点からも非常に限定的な内容にとどまっていて、骨抜きまではいえないとしても現実的には意義がどの程度あるのが微妙なところです。そもそもオーストラリアも移民で成り立っている国家のひとつなのですから、もっと抜本的な対策をしたほうがいいような気がしますし、この問題は国家成立の背景も含めて、日本とは異なる部分あるいは異なるアプローチが求められる領域だと思います。(人種差別とは別問題なのですが)

なぜ日本の首相は四島の離れ小島を恋しく思うのか

2月9日号の The Economist 誌に北方領土問題に関する記事が載っていました。

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曰く、元々は日本領土であったのでソ連によって追放された元島民(およそ6,000人、その多くが根室に住んでいる)にとって先祖が眠る「furusato」であることは確かですが、戦後実効支配しているロシア側から見ても「furusato」となっていることを日本側が認識し始めているとしています。

また、クリミアを「併合」したプーチン年金問題など内政に問題あり支持率がかつてもほど高い水準にはありません。国内の極右勢力やナショナリストの反感を買う「返還」に応じるわけがない。したがって安倍首相が(祖父/父の代から)追求してきた北方領土返還は、失敗することになるだろうと、という結論です。

同誌が指摘する通り日本国内のメディアも報道の仕方が変化してきています。もちろん日本国内の右派にとっては心地よくありません。それでも二島返還でも問題ない、という声が右派から聞こえているのは、非常に現実的であると思います。またそういった不満が IWC 脱退につながっているという見方は以前紹介した通りです。まとな進展があればいいのですが。