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カンガルーと干ばつ

The Economist 誌の12月21日号からオーストラリアの干ばつに関する記事を紹介します。

www.economist.com

 

曰く、オーストラリアには人口の2倍の約4,000万頭のカンガルーがいるとされていますが、その数は近年減少傾向にあるとのこと(主な理由は近年深刻な被害をもたらしている干ばつ)。なお、同国ではカンガルーの商業利用(主に食肉と毛皮での利用)が認められており、その市場規模は年間約170億円(250百万豪ドル)にも上るそうです。

 

この記事ではカンガルーを家畜として扱うことがカンガルーの頭数管理および動物福祉の観点から良いのではないかと主張しています。畜産農家はカンガルーを牛や羊の(水や食料面での)競争相手とみなしていますが、一日当たり1.5リットル程度の水消費量であるカンガルーは牛や羊の水消費量から考えれば誤差の範囲であり、牛や羊のゲップから出る温室効果ガス(メタン)をカンガルーは放出しませんし、何よりカンガルー肉は牛肉や羊肉と比べて脂肪が少なくタンパク質量の面で優れていることを根拠に挙げています。

 

確かに景観を考えるとカンガルーが餓死あるいは渇死している状況を避けたいのはやまやまですが、国のシンボルであるカンガルーを肉食用に流通させるというのもオーストラリア人であれば避けたいことではないでしょうか。加えて栄養面で優れているかもしれませんが、牛肉やラムと比べるとカンガルー肉はそもそもおいしくありませんし、畜産業界が内包する環境問題を根本的に解決する手段でもないので、積極的に踏み出すことではないと現時点では考えています。