英国 The Economist 誌を読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economist を読んだ感想を書きます

牛のゲップから出る温室効果ガスを抑える意外な方法

The Economist 誌の11月1日号に温室効果ガスについての面白い記事が載っていました。

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曰く、オーストラリアの研究機関であるCSIROの研究によると牛の飼料にある海草Asparagopsisを混ぜるとメタン排出量が減少することが確認されたとのこと(1%まぜると67%も減るようです)。牛は豚や鶏と異なる消化システムを有しており、山羊や羊と同じくゲップの際にメタンを放出します。これはImpossible BurgerやBeyond Meatといったミートテック企業が牛肉から対象にしている理由のひとつでもあります。問題は、海草を食べた牛からできる牛肉が実際に美味しいのか、と疑う消費者も出てくることでしょうか。

 

メタンの問題については、Shellなどのオイルメジャーが天然ガス開発に舵を切る中で問題視されています。記事ではメタンをCO2の28倍の温室効果のあるガスとして紹介されていますが、CO2よりも早く地球上から消えるといわれているため、対策が非常に効果的だといわれています。

 

また「一頭の牛は一台の車と同じだけの温室効果がある」、とのThe Economist誌の記載ですが、プロダクトサイクル(車1台を作るのに必要なエネルギーと牛一頭の消費するエネルギー比較)の話をしているのか、実際にガソリン車が出す排気ガスの話と牛が出すメタンの比較をしているのか、この文脈では分かりません。非常に分かりやすくショッキングな一文なだけに、もう少し詳しい背景説明がほしいところです。

Softbank の勝ち?価値?

8月1日号のThe Economist 誌に SoftbankVision Fund 2 の話が載っていました。

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曰く、Vision Fund 1 の成功を判断するのは時期尚早でFund終了の2029年を待つ必要があるが、2019年3月末時点で利回り29パーセントは十分すぎる出来ではないか。Vision Fund 2にはMicrosoft, Apple, Foxconnなどのテクノロジー業界からの参画もあって1080億ドルという巨大な規模で9月ごろに開始される見込み(Softbankは380億ドルを出資予定)。また、(まだ課題・乗り越えるべき障壁は多いものの)T-MobileとSprintの合併が許可されたことによりSoftbank のバランスシートが改善する可能性も高い(約束されたわけではないが)、とのこと。

 

一方で、WeWork のように多くの投資家が「不動産企業」と認識しているような企業を「テクノロジー企業」とラベリングして投資することにより、テクノロジー企業の過大評価あるいはインフレを招いている、という指摘もなされています。

 

とはいえ、その後のニュースで、IPO後の時点では「詐欺まがい」という声も聞こえていたSoftbankの株価がIPO時を超えたという話も入ってきており、やはり企業価値を向上し続けることに腐心している企業が過小評価されている間は、買いのスタンスでよいのではないかと考える次第です。

地球温暖化の問題に取り組むべきなのは?

7月6日付の The Economist 誌に Shell の取り組みに関する記事が載っています。

 

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同誌は石炭から天然ガスへの移行の際には汚さと汚れた服を冷たい水で洗濯しないといけないことがドライバーになったという Shell CEO のエピソードを紹介しながら、化石燃料からクリーンエネルギーへの移行の際には地球温暖化がドライバーになるはずだ、という論調で Shell の取り組みと実際の問題点について触れています。

 

Shell は他のオイルメジャーとは一線を画しており、特に向こう 30 年のクリーンエネルギーへの需要の高まりを察知して石油ではなくガスに投資し、役員報酬は排出量削減と連動するようにしています。とはいえ、株主の要求に応えるべく配当原資のレガシービジネスである石油/ケミカルを捨てることはありません。その言い訳として、社会全体で取り組むべき問題(生産者の Shell だけでなく、ガソリン車を生産する車メーカーや車を運転する消費者もそのコストを応分負担すべき)という認識が不足していること、さらには Shell のような民間以外の生産者の影響が大きすぎる点(国営石油会社から取り組むべき)に加えて、エネルギー需要は発展途上国の近代的な生活への需要に繋がっており、先進国が無視すべきではない、といった点を挙げており、かなりの説得力を持っているように思います。

 

このブログでも何度か取り上げていますが、これはステップバイステップで対処するべき問題です。なぜならば経済的な革新がない限りいきなり100%再生エネルギーという世界は来ないでしょう。それであれば、それまでの間は天然ガスで妥協しつつ、1日でも早く革新を待つ、という姿勢でいいのではないかと思います。

Facebook と Libra

The Economist 誌の6月22日号に Facebook が発表した新しい暗号通貨についての記事が興味深いものでした。

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曰く、同社は Libra と呼ばれるブロックチェーン技術を使用した自社通貨を発行し、プラットフォームである Facebook 経由で使用できるようにすると発表。24億人の Facebook ユーザーは Libra をショッピングや送金(同社は海外送金手数料を無料にすることを強調)に採用でき、すでに VISA や Uber など 28 社が Libra 決済の輪に加わることを表明しています。

 

Libra の特長は主要通貨のバスケットにリンクさせる点です。Facebook から独立した組織が、債券市場などの安全資産で運用する形になるため、いわゆるナローバンクの形態を取ることになります。仮に欧米の銀行の預金者がそれぞれ10%を銀行から Facebook に預金移動すると、Libra の規模は2兆ドとなり世界有数の金融機関になり得ます。

 

海外送金については、昔から銀行業界の利益の源泉です。近年は Transferwise のような企業が画期的なレートを提供していますが、それでも十二分にフラストレーションが溜まるレートの適用です。それを無料にする、24時間365日対応にするとしている Libra はユーザーにとって魅力的だと思います。個人的にも、資産分散の観点からぜひ買いたいと感じます。

 

問題は Facebook のカバナンス体制で、個人情報の保護をきちんとできていない現状から考えると、更に厳しい情報管理が求められるであろう金融業に参入決定した同社にとって長い道のりになることが予想されます。ここは画期的なサービスあるいは世界を変えれるプラットフォーム業者としてぜひ乗り越えてほしいです。

ワクチンを信用する

6月22日号の The Economist の Politics this week に衝撃的なグラフが載っていました。

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曰く、 Wellcome Trust の調査によれば、ワクチンをある程度信用している人は約80%程度にとどまるということ。さらに、先進国の人は発展途上国の人よりもワクチンを信用していないという衝撃的な結果になっています。

特に西欧諸国においては、ワクチンを強く信用している人の割合がわずか 36% と、ワクチンを安全ではないと考える人たちが多くなっています。

 

個人的には驚きの結果です。なぜなら、ワクチンは過去に多くの人が死んでいった結果生まれた特効薬のようなもので、多くの犠牲の上に成り立っている人類の英知のようなものだと思っていたからです。

トランプ大統領の英国訪問

The Economist 誌の6月8日号にトランプ大統領の英国訪問に関する記事が載っています。

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曰く、トランプ大統領は英国訪問中に女王やメイ首相が差し込んだ繊細な皮肉に気が付かなかったかもしれない、とのことです。中身を読んでみると具体的には国際機関の存在価値を褒めたことを指しているようで、根本的に対立する意見を持つ相手に使う皮肉のレベルとしては、むしろ低いのではないかと思いました。実際、Huaweiの件ではイニシアティブを取ったオーストラリアと相応のプレッシャーをかけているアメリカと比べて、イギリスのほうが楽観的に見えるという人もいるくらいです。

 

Brexit に対しても賛成の立場を取るトランプ大統領は、ボリス・ジョンソン氏を筆頭にメイ首相の後任候補であるコーヴ環境相およびハント外相と面談機会を模索していたようで、同誌も「前任のオバマ大統領と比べてどれほど効果があるのか知らないが」としながらも両氏はうれしそうだった、と締めくくっています。

 

ハイレベルに英国(同誌)と米国(トランプ大統領)の立場の違いが分かる良い記事です。気候変動やイラン関連では英国側に寄り添いたくなりますが、NATOや二国間ディールの件ではどうも The Economist の論が弱いように感じます。とはいえ、EU離脱後に米国と結ぶであろう二国間ディールこそ、Brexit派にとって求めているものだから同誌としては否定せざるを得ないという感じでしょうか。

原油価格上昇が世界経済へ悪影響を及ぼす

The Economist 誌の 4 月 29 日号に原油価格上昇が世界経済へ悪影響を及ぼすと警鐘を鳴らす記事が載っていました。

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曰く、シェール革命によって世界の原油輸出分野においても超大国となったアメリカがイランとベネズエラに対する制裁によって、原油価格が過去半年で最も高い水準まで上がっているとのことです。