英国 The Economist 誌を読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economist を読んだ感想を書きます

ソフトバンクの 1 兆円ファンドとそのリスク

The Economist 誌の3月23日号にソフトバンクVision Fund (サウジアラビアMbS が 450 億ドルもの出資を約束した 1 兆円ファンド)に関する記事が載っています。

www.economist.com

曰く、Jamal Khashoggi 氏の不審死に関するスキャンダルと Vision Fund 1 (同誌がそう呼ぶ) のガバナンス問題が孫社長が持つ Vision Fund 2 構想への逆風になり得るとのこと。後者よりも前者の方が潜在的ダメージが大きいのではないかと。

 

前者に関して、スタートアップ側が疑惑のサウジアラビアマネーを拒否する可能性は良いポイントを突いていて、現時点において MbS の関与は否定されていますが、今後新事実の発見や真相解明によって関与が明らかになった場合、「ヤバい」人からの出資は絶対に避けるべきという起業者側の基本線上にある弁慶の泣き所になりかねませんし、「汚いお金は要りません」と言われてしまうファンドに価値はありません。

 

後者については本文が詳しいですが、ソフトバンク本体の企業価値が Alibaba や Vision Fund や ARM などの出資企業の企業価値の総和から抱える純負債を引いた価値よりも 31% も割安であることは事実です。その対策も兼ねて日本の携帯電話事業を切り離して最大規模かつ詐欺的な IPO を実施したわけですから、好意的に捉える向きもあるでしょう。加えて、サウジアラビア側が一定規模以上の投資に拒否権を有するなど、ガバナンスも(表向きには)徐々に構築されているように感じます。

(Uber, Grab, Ola 等のライバルである) LyftIPO が行われたことによって Vision Fund が保有する銘柄も続々と IPO する一年になることが予想されるため、まさに正念場であり、引き続き世界中から注目を集めるソフトバンクには注目していきます。