英国 The Economist 誌を読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economist を読んだ感想を書きます

南アフリカの石炭

少し時間が空いてしまいましたが、今年も続けていきたいと思います。

 

1月22日号の The Economist 誌に南アフリカの石炭に関する記事が載っていました。

 

www.economist.com

南アフリカは世界的な石炭の産出国であるだけでなく、自国エネルギーを石炭に依存する国家でもあります。石炭は同国の一次エネルギー供給の77%を占めており、石炭火力発電によって生み出される電力だけでなく Coal to Liquid で生み出される石油や軽油も含まれます。(石炭のおかげでアパルトヘイト終了したという話もあるくらいです。)

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国営電力会社 Eskom の杜撰な経営もあり、2018年以降同国では頻繁な計画停電が発生。あらゆるビジネスへの悪影響も起こる中、老朽化した石炭火力発電所を閉鎖して、ポテンシャルのある再エネ電源を導入することが求められています。COP26 において、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツが85億ドルもの支援を表明、石炭依存からの脱却と GHG 排出量削減を10年前倒すことになるとの見立てです。

 

しかし、石炭業界が支えている20万人を超える雇用の問題をテコに、石炭依存脱却反対のロビー活動を行っており、石炭業界からのサポート(=票田)を得た政治家にとっては中々厳しい状況のようです。選挙はまだ少し先であり、内部からの牽制次第によっては現職大統領も石炭業界などの労働組合からの票田を得るべく動き始める可能性もありそうです。

 

また、再生可能エネルギーについては “a colonial takeover engineered by the West” ポピュリストから指摘されるなど、2024年の選挙に向けて国民はエネルギー政策についても興味を持ち始める時期であり、欧州各国とは真逆の状況である南アフリカにおいて再生可能エネルギー電源の間欠性により停電頻度が増加するような事態を避けるという大義名分のもと、雇用問題に端を発する石炭回帰の動きが見られてしまうのかもしれません。