英国 The Economist 誌を読むブログ

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サプライチェーンの地政学

10月12日号の The Economist 誌に中国が電子機器製造業のサプライチェーンを掌握している、という興味深い記事が出ています。

www.economist.com

曰く、Apple(の iPhone )をはじめとするハイテク時代の根幹をなす携帯電話の50%以上が中国で作られているとのこと。実際には組み立て作業であり、かつては労働コストの低さから選ばれていた中国ですが、周辺のライバル国(ベトナム等)への対応策として、工場は高度に自動化されており、依然として競争力を担保し続けています。

 

このサプライチェーン上の掌握は、地政学的な意味合いを帯びており、米国をはじめとする諸国の脅威になっています。紙面を賑わせる米国の対中関税引き上げの大きな理由の一つであり、それを格好の都合として中国から生産設備を引き上げる国も出てきています(日本企業では三菱電機が挙げられています)。潜在的な脅威を示す好例として「中国は携帯電話の組み立て作業の中で、スパイ目的でチップを埋め込んでいる」という事実のレポートもあるそうです(Apple 等の企業は即座に否定していますが、もっともらしいレポートであるという意見も)。

 

経済合理性だけを追求すると、地政学的な面で後れを取ってしまうという好例ですね。加えて中国はインフラビジネスに地政学的戦略から注力していて、実際に貸し付けの返済が見通せなくなったスリランカから港を取り上げており、巷では軍港にするのではないかという懸念も出ています。引き続き目の離せない分野です。