英国 The Economist 誌を読むブログ

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米国ドル覇権

The Economist 誌の1月16日号に基軸通貨としての米国ドルに関する記事が載っています。

www.economist.com

曰く、世界の貿易額の約半分が米国ドル決済であるとのこと。米国は9.11テロ以降、経済制裁に本腰を入れるようになり、トランプ政権においてもその基本姿勢を踏襲しつつ、さらに強化している状況です。経済制裁の妙は、米国ドル決済を使わせないことであり、制裁対象国を国際貿易から孤立させる力を有し、多くの場合、致命的な効力を持ちます。

 

当然、他の大国はこの手法を忌避しているため、代替システムの構築に躍起になっています。ロシアではエネルギー企業がルーブル建ての決済を始めています(同様に中国とベネズエラ人民元建ての原油取引をしています)。インドや中国も同じ動きをし、EU も米ドルを介さない取引ルートを模索していますが、現時点では功を奏したとは言えないでしょう。むしろ、ユーロやルーブル人民元といった通貨自体のリスクも見過ごすことができず、実際に代替システムが使用可能となるのは先とみる専門家も多いそうです。

 

経済制裁の緊張がより一層高まると金融危機に繋がるリスク(たとえば一兆ドル以上の米ドル資産を持つ中国の銀行がターゲットになった場合)、米国ドルの覇権がより政治的なものになった場合の金融政策の硬直リスク、そして米国ドル金融の世界からの移行は予測が難しく突然発生するリスクを三大リスクとしています。日本も米国債保有額が相当なものとなっているため、対岸の火事と見ているわけにもいかないでしょう。