英国 The Economist 誌を読むブログ

イギリスの週刊誌 The Economist を読んだ感想を書きます

人類は地球温暖化との闘いに負けつつある?

The Economist 誌の8月4日号の Leaders に地球温暖化に関する皮肉記事が出ています。

www.economist.com

曰く、地球温暖化対策として講じられている脱炭素化は、(1) エネルギー需要の激増による化石燃料発電の増加 (2) 経済・政治的な現状維持傾向 (3) 発電分野以外での対策の技術的困難さ、が原因で極めて難しいと認めながらも、先進国(主に欧米諸国)はパリ協定で合意した各国のコミットメントを遵守する努力を継続しなければならないとの主張です。

 

(1) と (2) については特に目新しくなかったのですが、(3) の部分では、鉄鋼業界、セメント業界、農業界、そして輸送業界に渡って、炭素が排出されていることに触れていて、技術革新の目覚ましい発電分野での転換が一層進んだとしても、削減効果は限定的であるようです。さらに言えば、中国で増加した電気自動車を走らせる電気は石炭火力発電から作られており、全体でみれば低燃費ガソリン車の方が二酸化炭素の排出量が少なかった、というデータもあるそうです。ロビー活動家の充実している業界からの全転換に短期的なコストが発生するというケースにおいて、足元の票を気にする政治家が主導的に動くとは考えにくいです。やはり、ビジネスの力で問題を解決する必要があるのでしょうね。

 

この記事に用いられたレトリックにも皮肉を感じました。トランプ大統領が米国をパリ協定から yank した(トランプ大統領 = Yank)という表現や、中国やインドでの大気汚染を gas-shrouded (shroud は死装束の白い布)と表現している点です。(尤も、だからなんだ?という話である上に、そもそも間違っているかもしれませんが。)